『王妃の離婚』
2012年 02月 13日私、個人的には、これが世界の3悪法だと、思っている。
人間、ルールを厳しくしすぎれば、絶対抜け道を考えたり、守らなかったり、裏でこっそりしかも、うんと高値をつけてやってたり。
そんなものだと。
人間がやるいろんな悪いこと。
それをひとつひとつ、悪いことだからやっちゃだめと、キリスト教では諭していて、禁止してるわけだけど、盗みや強姦、は、悪いことと納得できるとしても、離婚や同性愛の禁止は、やっぱり無理がある。んじゃないかと。
男女は結婚して仲良くしないさいとか、簡単に仲たがいしたり、喧嘩したり、別れたりしちゃだめだよっとか。愛の行為は、子孫を作るためのものだから、同性同士ではだめだとか。
でも、結婚しても、若いころの選択は間違うものだし、人の気持ちは変わるものだし、生まれつき同姓にしか関心がもてないとかいう、そういうものは、やっぱり、どうにも禁止しきれるものでもないし。
どうも、もう少し融通を利かせるべきものでは。と、思う。
まして、親や他人からの強制での結婚なんて、本人の意思じゃないものなら、なおさら。
この物語の離婚劇も、すごく真面目で真剣に描かれてはいるものの、そして、その描写はすごく面白くはあったけれど、読み終わってつらつら考えてみれば、すこぶる滑稽で、ばかばかしいことこの上ない。
所詮夫婦にしかわかりえない性交渉の真実を、やったのやらないのと、だいの大人が、それも、世間的に重要な職務についてる人たちが、大真面目で、やってるんだから、あほらしいったらありゃしない。
まして、後継ぎが必須の王族同士の結婚で、一夫一婦制で、しかも、離婚禁止というのは、無理がありすぎる。
そのせいで、イギリスのヘンリー8世は、次々と自分の妃を殺さなきゃならなくて、その挙句、もうそんなことは無理だったことに気がついて、とうとうローマカソリック教を脱退して、イギリス国教会を作っちゃったくらい。
そんな陳腐な話をとうとうと書いてあるこの小説は、だから、大人にはすごく面白いんだと、思うし、笑えることもこの上ない。
ルール作りや、法作りは、かくも難しく、人間を諭すのは、本当に容易じゃない。
さらには、国家的政治的理由のために、夫婦のプライバシーまで明かし、個人の恥辱もプライドもすべて犠牲にしていかなければならない王族というのは、本当に因果な職業だなぁと、思う。
そういえば、マリーアントワネットも、出産は、貴族全員の見守る中でやっていたっけ。
それにしたって、キリスト教の離婚禁止さえなければ、ただの性格の不一致とかくらいでも、離婚できるであろうに、こんなめにあわされてもそれでもなお、彼らがキリスト教をやめないのはなぜだろう。
ところで、こんな昔からヨーロッパには、大学があったのですね。
このころから存在しているパリ大学。
西洋の大学の歴史の古さ。
とてもじゃないけど、たかだか100年くらいの歴史しかない日本の大学が、世界ランキングにまずはいれなくて、ちゃっちいのは、もう、無理もないのだと、納得でした。
でもその立派な大学で、こんなばかばかしい離婚裁判をやる人材を必死に育てていたわけだから、さらに、ばかばかしいし、笑えます。
以上16世紀末のフランスを舞台に、フランスの国王夫妻の離婚劇を描いた物語でした。
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