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by civaka

マイケル・サンデル『許せる格差・許せない格差』

昨夜NHKで、夜10時から放送していたマイケルサンデル。
話題の先生だけど、真面目にみられたのは、はじめてかも。

テーマは、「許せる格差、許せない格差」

だったんですが、それで結論はっていうと、結論自体はでません。
この先生の授業でやっていることは、問題に対して、どういうように考えるのかという、方法論を教えるということですね。

今回のテーマに対しては、人は自分のいるポジションにとって有利になるような結論を出そうとするもの。けれど、本当に正しく答えをだすためには、自分のポジションを離れて、すべての人にとっていい結果となるような結論を出すべき、ということでした。

考えてみれば、学校でやっているいろんな授業もみんな、方法論を学んでいたんだなと。

で、この手の授業は、いろいろな参加している学生に意見を言わせて、考えさせて、結論を自分たちで考えて導き出したように感じさせるけれど、実際には、先生の前もって考えている結論に向かわせていくもの。

野球チームの選手の収入に差があるのは、しかたないかもと、大概の人が思っているもの。
その例を出した次に、では、会社の場合はどうかと、考える。
技術部の開発したものによって、会社に大きな収入がもたらされた。
その収入をボーナスとして社員に配るとしたら、
①全員に配るべきか、
②開発した技術部に特に半分を渡すべきか、
③経営の成果として、経営陣により多く配られるべきか。

でもこれ、この比較はおかしい。
これを比較する場合、野球チームもまた、選手チームのほかに、野球チームを経営する経営陣、野球チームの経理、広告、人事などを管理する一般事務社員がいるはず。
選手チームと、技術部が同じ部分に当たる。
そして、技術部が開発した技術といっても、それは、技術部全員ではなく、一部の人間あるいは、ひとりであるかもしれない。

ただ違うのは、野球選手は、成果がでなければ、契約更新がない。つまり、会社で言うところのクビ、解雇と同じ。
でも、会社の技術部は、たとえ、成果をださなくても、解雇されないし、とりあえず、研究をつづけていれば、成果がでても、でなくても、給与は払われ続ける。そしてそういう技術部の社員の給与や、会社全体の社員の給与をだし、社員をささえているのは、会社全体であり、すべての社員のそれぞれの立場での仕事なのではと思う。度の社員も必要だから雇われているわけで、そのすべてがそろっていることで、会社は、成立している。

それを野球チームの成果方式と比べるのは、違うはず。

でも、この授業で先に野球チームの例をだされることで、考える学生たちも、テレビをみているこちら側も、ちょっとした錯誤を起こしているような気がする。

それでもこの番組をみていて、学生さんが、自分の意見が他の人に反感をいだかせるかもしれないけれど、と言いつつ、意見を言うシーンがあって、たとえ他者に非難されようと、自分が正しいと思う意見をいえる勇気にあらっステキっと思ったのでした。

今日本にある格差。
派遣労働、移民労働者、企業というのは、常にいかに原価を安くするかを考えているわけで、モノの値段はすべて人件費なわけだから。
安い人件費をもとめる企業と気がつけば安く使われてしまう労働者。

その中でもとめる正義。

今現在答えの出しにくい問題ではあるけれど、考えてみれば、今では当たり前の男女平等や、男女のすべて、収入に関係なくあたえられている選挙権だって、数十年昔は、差別されていたわけで、今悩んでいる格差も数十年後には、なぜあの頃あんなに悩んでいたのかと思うほど当たり前なこととして解消されているのだろうか。

経営者や技術者にはあるかもしれない成果を上げたという事実は、普通の事務の一般社員には、存在しない。どんなに効率よく仕事をしても評価されることはない。
そして、女性ゆえに常に男性より給与が低く、出世のチャンスもなかった。

そういう立場からすれば、成果が出たことイコール報酬と、ダイレクトにされるなら、一般職にだって成果を評価するシステムがあってもいいはずだし、移民労働、派遣労働以前に存在した男女格差すら、いまだに解消されていないはず。

立場の弱いものが損をする。搾取される。

弱い立場の人間の気持ちになって考える。
最終的に求められるのは、想像力の豊かさと、感性なんだそうです。


by civaka | 2012-03-20 11:59 | 社会のあり方を考える | Comments(0)