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by civaka

『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』 大島真寿美 著

とにかく文章が読みやすい。
そして、実在の人物の話とは知らずに読み始めたので、純粋に物語として楽しんで読んでいくうちに、はて?と、思った。
主人公の近松半二が実在の人物で、タイトルの『妹背山婦女庭訓』が人形浄瑠璃として、歴史に残る名作だと知る。

芸術家の人生は、ただ一つの名作を生み出すためにあるのだと思う。
それは、絵でも、彫刻でも、音楽でも、小説でも、同じだと思う。

近松半二の人生もまた、名作『妹背山婦女庭訓』のためにあったように、物語は、名作の誕生に向けて、たくさんのエピソードが丁寧に見事に織り込まれていく。彼が立作者となるために、浄瑠璃狂いの父親がいる。彼が浄瑠璃を書かずにはいられないように、その人生を追い込んでいく母親がいる。兄のかつてのいいなづけだった幼馴染が、半二を物語の舞台妹背山に、吉野川に、誘う。女の人生の息苦しさと、生きづらさ、男を好きになる女心と、恋心が、女の中でどんなふうに変化して、転生していくかとせつせつと語る。
そんな会話がやがて半二の中で少しづつ醸成して、名作『妹背山』へと結実していく。

女であることが女の人生をどれほどしばりつけ、生きづらくしているかを、男性の作家がこんなに見事に描き出していることを、女性の著者である大島真寿美が、語ってくれる。

作品を作ることはとても苦しい。その苦しさにのみこまれてしまう作家がどれほど多いことか。
作家たちのたくさんの思いと苦しみが渦となって、芸術を作り出していく。


by civaka | 2019-10-05 16:17 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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